敬矢と真尋はカウンター席に座り、洋一は数人座れるイスに腰掛けテーブルに肘を着いていた。かくいう俺は敬矢と真尋といくつか離れたカウンター席に座った。

少しの沈黙の末、洋一が口を開いた。

「あのときはすまんかった。るきと仲良くなりたくて、子どもながらに考えた。やけど、それは失敗に終わって結果的にるきを苦しめることになってしもうた。るきがいなくなったって知ったときも、ついカッとなった。るきと仲良くしたいのに、仲良く出来ない。るきを守ってやれるのは夕緋だけやったのに、守らなかった夕緋が嫌で嫌で。それに、夕緋は予想以上に冷静で、るきのことなんてどうでもいいって言ってるような雰囲気で。嫌いだった。あのときだけは夕緋が。本当にすまんかった」

洋一が言い終えると着いていた肘は正しく太ももの上に添えられていた。

話している最中はそれはそれは苦しそうに俺たちのほうを見ていた。

今は伏せている目だけれどそこからは謝罪の念がひどく感じられた。

「じゃあ、僕が」

すると敬矢がしゃべりだした。

「小学生のときのあのころ、もう許されるとは思っていませんが。本当にすいませんでした。幼いながらに考えた仲良くなるための方法が、まだまだ幼稚で相手の気持ちを考えることができていませんでした。それに気付いていながらも、洋一たちに流されて。本当にすみませんでした」

敬矢が話し終えて、少しした後、カフェの外が騒がしくなった。

強い風がびょうびょうと吹き荒れ、大粒の雨がぶつぶつと落ちてる音だ。

外の不穏さはカフェ内部にも伝わってくるようで、俺含めみんなどこかそわそわとしているような不安感に襲われた。

静まり返ったカフェは、風の影響でギイギイと音を立てるドアの声が響いた。

残った俺と真尋はなかなか話し出す素振りを見せず、小さい子どもが怒られてずっとだんまりしているような感じだ。

それでも、俺は話すことをせず、いつのまにか5分程経っていた。

「真尋と夕緋はいいんですか?」

敬矢が場を取り持つかのように一言告げた。

俺は真尋の方を横目で見る。

真尋はカウンターに向かって顔を下げていて話すつもりはなさそうだ。

かくいう俺も真尋と同じように話すつもりはない。

「折角、全員集まったんですし...恨みっこなしで本当のことを言い合える仲直りにしませんか」

敬矢は真尋に向けてそう放った。

なかなか話し出そうとしない真尋がおかしいと踏み、隠し事でもあるのではないかと予想したようだ。

すると真尋は、その言葉に誘われるように「...わかった」と呟いて顔を上げこちらを向いた。

「実は相談受けてたんだ。洋一や敬矢と仲良くしたい。誤解を解きたいって。るきから」

「え...?もう一回、言って...」

「う、うん...。るきから、洋一や敬矢と仲良くしたい。誤解を解きたいって、相談を受けてたんだ」

「じゃあ、俺が、俺が、俺が、るきの仲良くしたいっていう気持ちを知っていたら、一緒に帰るのを断ることもなくて...」

「違う、そうじゃないよ...!!夕緋が悪いなんてことはない」

「でも、そうだろう?俺がるきの気持ちをきちんと理解してあげてれば...!!俺が断らなかったら...!!!俺が、俺が、俺が悪いんだ...。るきのことなんも知らないくせにるきの気持ちわかったような行動して、それは結局るきを苦しめ殺してしまった....悪いのは俺だよ!!!俺がるきのこと、なんも、わかんなかったから...!!!」

俺は頭を抱え泣き叫ぶ、真尋は苦しそうにこちらを見つめている。

敬矢と洋一はお互い立ち上がり俺を宥めようとこちらに向かって来ていた。

「俺が、俺が俺が悪いんだ...俺が全部、るきのこと分からないのに知ったようなこといって.........!!!!!!俺がるきを殺したんだ」


真尋は辛そうに涙を浮かべ座り込んだ。その涙は零れ落ち、湿っぽく残った。